2010年10月20日
競馬場の雰囲気って好き!
太平洋を東に向かう偏西風が普段よりも強く吹いていたのだろうか、清一は予定よりも一時間早くサンフランシスコ空港に到着した。空港には現地社員の矢口清隆とゲーリーが迎えに来ていた。昨秋、アメリカでエンデュランスの訓練を始めてから、さまざまな局面で協力し、ライドにはクルーとして参加してくれているふたりだ。空港からカリフオルニア州ネバダ・シテイまでは車で菊花賞予想約三時間。やや遠回りになるが、ワイルド・ウエスト・パイオニア・ライドのトレイルの近くを通ってみることにした。ハイウェイのネバダ・シティ。ジャンクションを降りると、あたり一帯は国有林の深い森に包まれていた。その森の中に、ワイルド・ウエストのベースキャンプとなるスキルマン・キャンプグラウンドがあるらしい。キャンプヘは明日行く予定なので通り過ぎるだけにしたが、宿泊するホテルからキャンプまで約一三マイル、車で二五分ほどの距離であることを確認しておく。ネバダ・シティは、今も西部開拓時代の雰囲気と町並みが残る観光名所だ。
2010年10月20日
菊花賞直前
自分でも驚くほど、気分はさばさばとしていた。むしろライドにおける貴重な体験をしたことで、またひとつ勉強になったというクールな思いがあった。本やウェブサイトでの知識だけだったエンデュランスの世界を、実際にひとつひとつ体験しているのでる清一の心の中では、やるだけはやったという気持ちのほうが勝っていた。ワツショー・バレー・ライドで清一が学んだことは、ライドを中止する判断と決断だつた。自分の骨折だけではなく、ハルやデイヴイツドなどパートナーの失格や〈マキナ〉の調子、そして道に迷ったことなど複合的な要因により、中止を決断せざるを得なかった。テキサス出身の〈マキナ〉は、平地には強いが岩山の登り下りが多いネバダ州の地形には弱いということが分かつた。トレイルの地形によっては、それを得手不得手とする馬がいるということだ。オリエンテーリングのような第71回菊花賞予想道標の確認なども、あらためて勉強させられた。まつたく知らないコースを、道標だけを頼りに進む難しさなど、実際に体験する以外に学習方法はないだろう。最初に出場した
カムストックでは怖いもの知らずの勢いだけで走破してしまっが、今回初めて、清一はひとりで走るという経験をした。馬を単独で走らせることの難しさを知り、それと同時に、ひとりで走る場合には常に状況に応じた冷静な判断が必要だということも学んだ。「これからはアンやハルに頼るだけではなく、自分で何とか出来るようにならなければ」そんな思いが、清一の中でよりいっそのこと…
カムストックでは怖いもの知らずの勢いだけで走破してしまっが、今回初めて、清一はひとりで走るという経験をした。馬を単独で走らせることの難しさを知り、それと同時に、ひとりで走る場合には常に状況に応じた冷静な判断が必要だということも学んだ。「これからはアンやハルに頼るだけではなく、自分で何とか出来るようにならなければ」そんな思いが、清一の中でよりいっそのこと…
2010年10月20日
久しぶりの投稿
なんとか四九マイル地点までは辿り着くことが出来たが、この時点
で清一の身体は、自分ではもうどうにもならないほどボロボロの状態になっていた。ここで少しだけ休んで再
び出発しても、このままのペースで行けば今後のライドは真夜中の走行になってしまう。デイヴイッドもハルも失格
になっているので、車が入れない山間部では完全な単独走行だ。しかも天候が急に荒れはじめ、深夜には吹
雪になるという最悪の天気予報も出されていた。かなりの危険が伴うことが予想された。天候が荒れると、
この先の山間部は猛吹雪となり気温も零下を下回る。そのうえ雪が降り積もれば、土地勘のある慣れたライ
ダーでさえ道が分からなくなってしまうことがあるという。そうなれば、もう捜索隊が救出することさえ不
可能な状況になってしまう。エンデュランスの経験が豊富なハルは、このままライドを続行すれば生命の危険もあると
言う。ハルはクルーや大会本部関係者と検討した結果、ここでライドは中止にしたほうがよいという結論を出した。
その結果を私に伝えた上で、私が中止に同意するのであれば、清一に話してはしいと言う。私は、清一に事実
だけを伝えた。清一は、しばらく黙り込んでいた。真っ暗闇で猛吹雪の山を、たったひとりで〈菊花賞万馬券予想〉に乗り、
道に迷わずゴールまで辿り着くのはほとんど不可能だと思えた。完走したいという強い思いはあったが、最終
的な目標はテヴィス・カツプ・ライドの出場である。無理を押し通すだけではなく、時にはライドを棄権するという冷
静な判断も必要だと考えた。清一は、ライドの中止を決断した。「今回は諦めよう、みんな、ありがとう」ハルを含
めたクルー全員から「ほお―」という安堵の声が洩れた。ライドの中止を決意しても、清一には不思議と「悔しい」
という気持ちは湧いてこなかつた。
で清一の身体は、自分ではもうどうにもならないほどボロボロの状態になっていた。ここで少しだけ休んで再
び出発しても、このままのペースで行けば今後のライドは真夜中の走行になってしまう。デイヴイッドもハルも失格
になっているので、車が入れない山間部では完全な単独走行だ。しかも天候が急に荒れはじめ、深夜には吹
雪になるという最悪の天気予報も出されていた。かなりの危険が伴うことが予想された。天候が荒れると、
この先の山間部は猛吹雪となり気温も零下を下回る。そのうえ雪が降り積もれば、土地勘のある慣れたライ
ダーでさえ道が分からなくなってしまうことがあるという。そうなれば、もう捜索隊が救出することさえ不
可能な状況になってしまう。エンデュランスの経験が豊富なハルは、このままライドを続行すれば生命の危険もあると
言う。ハルはクルーや大会本部関係者と検討した結果、ここでライドは中止にしたほうがよいという結論を出した。
その結果を私に伝えた上で、私が中止に同意するのであれば、清一に話してはしいと言う。私は、清一に事実
だけを伝えた。清一は、しばらく黙り込んでいた。真っ暗闇で猛吹雪の山を、たったひとりで〈菊花賞万馬券予想〉に乗り、
道に迷わずゴールまで辿り着くのはほとんど不可能だと思えた。完走したいという強い思いはあったが、最終
的な目標はテヴィス・カツプ・ライドの出場である。無理を押し通すだけではなく、時にはライドを棄権するという冷
静な判断も必要だと考えた。清一は、ライドの中止を決断した。「今回は諦めよう、みんな、ありがとう」ハルを含
めたクルー全員から「ほお―」という安堵の声が洩れた。ライドの中止を決意しても、清一には不思議と「悔しい」
という気持ちは湧いてこなかつた。